ep37 侵入者! 格納庫で待つものは

翌朝。心を決めた彼らは女王に謁見し、シェバトに協力すると伝えた。

女王が満足げに頷いた時、シェバトに衝撃があった。何者かがドックに侵入、ゲート・ジェネレーターの子機を爆破したのだ。伝令の情報によると侵入者はユグドラシル収容の為ゲートを消した隙を突いて侵入。子機を爆破し、ゼプツェンの格納庫に逃げたと言う。

フェイたちはマリアと共に格納庫へ向かった。格納庫で待っていたのはドミニアだった。

ゼプツェンの上に立つドミニアは、マリアを見ると彼女の父ニコラが何の研究をしていたか語りだした。

「ニコラは脳神経機械学の天才。うちの科学者たちはニコラに人と機械を一体化、つまり生きた人の脳とギアとをダイレクトに接続させる生体兵器を開発させたのさ。ニコラはそれを完成させた。彼は地上人にとって地獄の門を開けちまったってわけさ。捕らえられた地上人はウェルスにされ、合格したものがギアの制御回路として生まれ変わる。その試作機がこのゼプツェンだ。そして、このゼプツェンの神経回路には……

彼女がそこまで言った時、どこからともなくジェシーが現れ話を遮った。

彼に銃口を向けられたドミニアは、不敵な笑いを残して去った。

ドミニアの話に落ち込むマリア。だが感傷に浸る間もなく、ソラリスの侵攻は続いていた。

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ep36 天空のシェバト 風の声を聴け

シェバトのドック。ギアから降りたフェイたちは少女に案内される事になった。

少女はマリア・バルタザールと言った。アヴェの地下鍾乳洞のバルタザール爺さんは、彼女の祖父だという。

マリアに案内される一行は途中彼女のギア、カラミティの後継機だと言うゼプツェンの格納庫に寄った。

ゼプツェンを見上げながら、マリアは父の事を語りだした。

「このゼプツェンは父さんが開発したものです。父は私を盾に取られて、無理やり研究をさせられていたんです。でも私には悲しい顔は決して見せなかった。ゼプツェンが守ってくれるよって。五年前のあの日、父さんは私を庇って一人取り残されて。父さんの笑顔を取り戻さなきゃ……

……父さんはいつかきっと助け出してみせる!」


その後フェイたちは彼女の案内で王宮へ向かった。女王の間の前には何故かワイズマンが待っていた。

彼に促され、フェイたちは女王ゼファーに謁見した。

女王は一見すると少女のように見えるが、ある男に特殊な延命処置を施され現年齢は522歳。世界が終わる日まで強制的に生きながらえさせられているのだと言う。これは償いなのです、女王はそういった。

さらに彼女はワイズマンにある男を監視させ、その傍ら地上でシェバトの助けになってくれる者を探して貰っていた事。500年前地上人の解放をかけてソラリスと戦い抵抗を続けていた事を話し、フェイたちに協力を頼んだ。

彼女はフェイたちに考える時間を与え、宮殿で休ませる事にした。

「ことにエリィ。貴方は自分の家族や仲間と戦う事になるかも知れません。相当の覚悟が必要ですよ」

……はい、承知してます」


仲間達と別れ王宮内を見て回っていたフェイは、シタンの妻ユイと娘ミドリに会った。もともと彼女はシェバトの生まれであり、ラハン村壊滅の後生き残った村人達は彼女の案内でシェバトに移ったのだという。

彼女と別れさらに王宮内を回っていたフェイは、バルコニーでたそがれるマリアを見つけた。

「戦う理由は自分で見つけ、自分のものにしなければいけない。お爺ちゃんはそう言ってました。このシェバトに来て三年。お爺ちゃんも女王様も、ひとりでソラリスに行ってはダメだって。でもゼプツェンなら、どんな相手にも負けないのに。こうしている間にも父さんは……

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ep35 バベルタワー 天にとどく道

事態が一段落した後、フェイたちはジェシーが今まで何を目的に動いていたのかを聞く事になった。

ジェシーソラリスにいた時、M<マラーク>計画について探りを入れていた。計画を進行させる為に地上人が実験台に使われウェルスになっていた事、計画の中心となるニコラと言う科学者が真相を試作ギアに移し、マリアと言う娘と共にソラリスを脱出した事。

この2つ突き止め、その後地上に降りてその行方を追っていたのだと言う。

現在その少女はシェバトにいるらしいのだが、連絡のつけ方すらわからないとジェシーは語った。


その時『教会』本部で助けられ、ユグドラシルで治療を受けていたシェバト工作員が現れた。彼女も虜囚となっていた為通信手段は無かったが、その昔シェバトがアクヴィの中心に立つバベルタワーの頂上にあった事から、そのバベルタワーに行けば何か連絡手段があるかもしれないと言った。

ほかに手段もないフェイ達はとりあえずバベルタワーに向かう事にした。


アクヴィ群島の中心にそびえるバベルタワー。高さが5kmにも及ぶこの塔は、いつ建造されたのかすら定かになっていない。通常は『教会』が調査をするため入り口を封鎖しているのだが、先だっての本部壊滅により警備がなくなっていた。

フェイ達はギアに乗りその塔へ入った。塔の内部は広大な吹き抜けになっており、壁から壁へつながる足場を渡りながら上を目指した。

しばらく上ると、壁に張り付くように止まっている輸送列車のような物があった。その列車はギアでそのまま乗れるほど巨大で現在もエネルギーが生きており、その列車に乗ってフェイたちは一気に塔を駆け上った。


やがて外壁に出ると、列車前方の線路に向けて砲撃があった。ラムサス艦からの攻撃だった。

列車を離脱し外壁に飛び出たバルコニーでラムサスを迎え撃ったフェイたちはこれを撃破。

ラムサス艦がラムサスの撤退を援護すべく砲撃を開始した時、遥か上空からラムサス艦へ向けて光の矢が降り注いだ。それがシェバトからの攻撃だと知りラムサス艦は回頭、急速離脱した。

思わぬ援護に戸惑いながらも一行は頂上へ向かう為、壁に巨大な鏡があるそのバルコニーを後にした。


再び塔内部に入ったフェイ達は、コントロールルームのような場所を見つけた。通信設備は生きているようだが、シェバトとの交信は出来なかった。その他に何かないかと調査をするも結局外壁の鏡を操作する事ぐらいしか解らず、彼らはその場を後にした。

さらに先に進んだ彼らは石材で作られた家屋が並ぶ居住区のような場所に出た。しかし、奇妙な事に、それらの家屋は塔の外壁を地面にして横に建てられていた。

その家屋を足場にさらに上っていくと、ついにバベルタワーの頂上に出た。しかし、そこには通信設備の様なものはなく、ただ空が広がっているだけだった。

辺りを見回していたフェイたちに突然声が掛かった。見ると、空からカラミティに似た大型ギアが降りてきた。

ギアの頭には少女が乗っており、少女はフェイたちに退去を命じて襲い掛かった。

フェイたちが少女のギアの攻撃力に翻弄されながら抗戦していると、空から別の声が聞こえ、少女は矛を収めた。

彼女はフェイたちを試していたのだ。

フェイたちは、彼女に案内されてシェバトに入った。


彼らがシェバトに入ったと言う情報は、すぐさまガゼルの法院の耳にも入った。

「ラムサスめ、シェバトとの接触を許すとは。あそこには"アニマの器"があるはずだ」

「我らの準備が整う前に同調されては厄介だ。我らの拠り代の型、合わなければ意味がない」

「シェバトごと葬るか? アニムスは他にもいる」

「シェバトのゲートはどうする?」

「なに、アハツェンの重力子砲で中和すればよい。再教育もすんだ。いけるよ」

「それは楽しみだ」

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ep34 深海にねむる少女 魂の在処

司教の後を追うエリィたちは、ゼボイムが見渡せるあの渡り廊下で追いついた。少女を取り返そうとしたその時、突然真紅のギアが現れあの赤い長髪の男が降りてきた。彼も少女を取り返そうとしているようだった。

真紅のギアを見たバルトは、ユグドラシルの恨みもあって男に突っかかって行った。男はイドと名乗り、バルトたちに襲い掛かった。イドは凄まじい程のエーテルを操り、リコですら全く歯が立たなかった。

あわやここで皆殺しかと思われた時、ワイズマンがギアに乗って現れイドを掴んだ。その隙にエリィたちはその場を離脱。司教を追ったが、既に時遅し。カレルレン艦は転移してしまった。


追撃のしようもなくユグドラシルに戻るエリィ達。その中でシタンは司教の言った「クビキを外す」と言う言葉が気に掛かっていた。カレルレンがナノマシンを使い、その昔リコやハマーのような亜人を作り出す事となったような実験を再び始めたら……。彼はそう危惧していた。


ユグドラシルに戻った彼らはギアハンガーでフェイに会った。彼は気づいたらギアに乗っていたという。

いまだふらつく彼をエリィたちが心配していると、ユグドラシルアルカンシェルが接近したとの報があった。

フェイを休ませて迎撃に出たビリーたちの前に、ウェルス化した司教の乗るアルカンシェルが迫る。

そこへグラーフのギアが突如現れ

「我が拳は神の息吹。"堕ちたる種子"を開花させ、秘めたる力を紡ぎだす。美しき滅びの母の力を」

とアヴェ奪回作戦の時ヴァンダーカムのドーラに施したようにアルカンシェルに波動を注ぎ込み飛び去った。

新たな力を与えられたアルカンシェルは強固なエーテル障壁を展開し、全くダメージを受けなかった。

攻めあぐむビリーを見て司教は嬉しそうに笑い、そして高笑いと共に話し始めた。

「ふふ……苦しんでいますか?ジェサイアの息子!!4年前、私が貴方を見込んだのは、貴方の父上と、私の旧い友情の証でした。共にゲブラー司令の座を争ったジェサイアとの憎悪にまみれた友情のね!

愛しあっていたラケルをケモノのように奪ったあげく、私があんなに欲したゲブラー至高の座までを、あっさり蹴飛ばして、ソラリスから姿を消したジェサイア!!

4年前、やっと見つけた地の果てには、すでに奴の姿は無く奴に汚されたラケル汚れの証明貴方と妹が

私はかわいそうなラケルをカレルレン様の英知、ウェルスで救ってあげました……

そしてもう一つ、貴方が今まで浄化してきたウェルスとは全てカレルレン様が術を施したただのヒト!貴方はヒトを屠っていたのです。外道な父親に相応しい、外道な息子じゃないですか!フハハハハ!さあ、ザンゲなさい!ジェサイアの息子!!


「いいや、お前が悔いる事なんてひとつもないぜ、ビリー!」

ジェシーが小型のギア、バントラインに乗って現れた。バントラインの開発者であるシタンはそれが人間弾頭のキャノン砲である事を思い出しビリーを止めようとしたが、通信がつながらなかった。

キャノン砲に変形しレンマーツォの肩に乗った小型ギアのコックピットで、ジェシーはビリーに語りかけた。

「もう解ったろ、捏造された信仰なんてまやかしだ。本当の神や信仰は自分の中に見出すものなんだ。お前は倒したウェルスの顔を見た事があるか?ウェルス化するってのは凄まじく苦しいことなんだ。その苦しみから逃れるため人の血を求める。しかし、本当にその苦しみから解放される方法は消滅しかないんだ。お前に倒されたウェルスは、安らいだ顔をしていただろう?お前はウェルス化した人を救ってたんだ。お前の信仰心はまやかしじゃない。神はお前の中にいるんだよ!」

そう言うとジェシーは合図した。ビリーがトリガーを引き、ジェシーの乗った弾頭が放たれた。

その爆発によってアルカンシェルの障壁は消え、彼らはこれを撃破した。


落ち着きを取り戻したユグドラシルの甲板で、ビリーは妹プリメーラと共に空を見上げた。

「ビリー君。私があんなものを作ったばっかりに。」

謝るシタンに手を振って、ビリーは空に向けて銃を三発撃った。

「親父を送るにはこれが一番です……


「そうだなありがとよ、息子」


なんとジェシーは生きていた。イカれた若者(シタン)が作ったポンコツ(バントライン)をいつまでもそのままにしておくワケにもいかず、既に改良してあったらしい。

父親の帰還に喜んで抱きついたプリメーラは、か細い声で「パパ」と口にした。

プリメーラの呪いもとけたようだな、と喜ぶジェシー

ビリーも妹に僕の名前も呼んでおくれ、と笑うのだった。

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ep33 古の声がいざなう 海底神殿へ

ユグドラシルがタムズに到着した頃には既にウェルスは掃討され、救難活動が始まっていた。

艦長たちの無事を確認したバルトらは、カレルレン艦とアルカンシェルを追って発掘現場へ急行した。


その頃、ギアに乗ったグラーフにミァンからの通信が入っていた。

「彼が再び目覚めようとしているわ。彼の仲間は今はゼボイム。あそこに何があるか、貴方の方が良く知っているでしょう? 彼は渡そうとはしない。けど、私たちにも必要なものなの。だから、お願い……


発掘現場。小さな無人の孤島にある入り口から入り、エレベーターで下った先には巨大な地下空洞があった。

空洞の地面を、高層ビル群とアスファルトが埋め尽くしている。その遺跡を遥か眼下に見下ろす渡り廊下に来た時、エリィが何かに取り憑かれたようにつぶやいた。

「空洞都市ゼボイム……。私達は、自らをこの広大な霊廟に葬った

我に返ったエリィと共に、バルトたちはソラリス兵を撃破しながら遺跡内部を進んだ。発達した文明を示すように、各所に超近代的な設備があった。どうやらこの施設はその稼動時に放射能汚染を防ぐために閉鎖されたようで、各所の隔壁が閉ざされていた。そのロックを解除しつつ進むと、最奥部にパスワードでロックされたナノリアクター室に行き当たった。

その部屋を見たエリィの脳裏に、血まみれで通路に倒れふす自分とそれを見て泣いているフェイの姿が浮かんだ。

「あの子はあの時からずっと、一人ぼっちでここにいたのね……

そうつぶやいたエリィは、制御室に向かい扉のロックを解除した。

『新たなる魂の器よ。願わくば宿るべきあなたのその魂に安らぎあれ』

ロックが解除されるのと同時にナノリアクターが稼動し、リアクター内に緑の髪をした少女が生成された。

そこへ、ストーン司教が現れた。彼はナノマシンの群体である少女を連れ去ろうとした。

「彼女はヒトのクビキを外す存在。これはヒトの救いとなるもの。これによって、選ばれた人間は救済されるのです」

「それは何か間違っています。信仰による救いの機会は等しく与えられるべきです」

ビリーはストーンに意見するが、ストーンはまた違った答えをビリーに示す。

「そもそも信仰とは選ばれた者だけが救われる事を期待するものなのです。貴方は全てのヒトを救えますか?カレルレン様がこのナノマシンを使えば、少なくとも選ばれたものは救われるのです」

「司教様、貴方はこの少女を使って何をしようとしているのですか? 僕は貴方が義しき者とは思えない。残念ですが、貴方のお心に沿うわけには参りません」

ビリーの言葉に対し、残念ですと言って立ち去ろうとした司教を止めようとするエリィ。しかし司教の護衛として付いていたエレメンツのトロネとセラフィータに阻まれた。

ラムサスの頭越しの命令で乗り気でないと言いつつも攻め立てる二人を撃破し、エリィたちは司教の後を追った。


その頃、ユグドラシルではフェイが夢を見ていた。

ナノリアクター室にいる自分。彼は窓ごしにエリィが銃殺されるのを何も出来ずに見ていた。

「その子を渡すわけには……いかないよね……」そう言って彼女は事切れた。

フェイが叫ぶと同時に周囲が暗転し、ニタリと笑った幼いフェイが彼の前に現れた。

「ククク……じゃあな……

看護婦が病室に来た時、ベッドにフェイの姿は無かった。

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ep32 信仰 炎の海で焼かれよ、我が魂

輸送船を後にした一行は、報告の為『教会』本部へと戻った。

一歩建物に入った途端、彼らは異変に気づいた。何者かが『教会』関係者を虐殺していたのだ。

粛清!と叫びながら襲い掛かる侵入者を排除しながら施設を回ると、教皇すらも殺されていた。

「神の裁きが下される」と言う教皇の最後の言葉に困惑しながらも、ビリーたちは奥へ向かった。

途中で監禁され衰弱していたシェバトの工作員を助けつつ地下に進んだ彼らは、大聖堂の真下に位置する施設を発見した。そこはソラリス製の最新設備が整っており、データベースからは以下の情報が得られた。

教皇であるシャーカーンから定期的に連絡が入っている事、教会が資源をソラリスに送っていた事。

さらに暗号化されたデータから衝撃的な事実が判明する。

500年前に起こったソラリスと地上との戦争後、地上人が再び造反する事を恐れたソラリスは『ゲート』と呼ばれる障壁を開発。その障壁に囲まれた地域に地上人を種族別に住まわせ、それを管理する組織として『教会』を設立。『教会』はその後、資源や人材などをソラリスへ送る窓口にもなった。

また近年『教会』が独自に進める計画があった事もわかった。『第44次サルベージ計画』。タムズの艦長が言っていた「大仕事」だった。アクヴィの地下にあるゼボイムの遺跡の発掘。そこからは生物兵器や反応兵器などが見つかっている。シタンはこれらの情報から、『教会』がソラリスから独立し、世界支配を画策していたのではないかと推測した。


自分の信じる『教会』がソラリスの下部組織であり、救済を求めてきた人々がソラリスに送り込まれている事を知って愕然としながら部屋を出たビリーを親友のベルレーヌとその従者が待ち構えていた。

ビリーに銃口を向けるベルレーヌ。そこへジェシーが現れ、ベルレーヌがソラリス工作員で、ストーン司教配下の暗殺部隊だと暴いた。

ベルレーヌは不気味に笑いながらビリーに言った。

「穢れた者を浄化したのさ、司教の指示でね」

「僕たちには勝手に人を裁く権利はない! 審判は神が下されるものだ!」

すかさず返すビリー。

「神だって?そんなものどこにいるんだい? 君の信じた『教会』は、ソラリスが地上の情勢を操作するために作られた組織だ。操作された衆愚は戦争を繰り返した。そうした戦争の心理的軋轢を解消するための信仰と救済。そういう『システム』だったんだ。神なんて"最初からいなかった"のさ。それに君だって断罪を下していたんだよ。君が日ごろその手にかけていた……グハッ!」

銃声がして、ベルレーヌが倒れた。ビリーが後ろを振り返ると、そこにストーン司教がいた。

「私はソラリスの粛清官。私の創った組織エトーンは、表向きはウェルスの浄化、しかし実際は有能な人材を選別し、『教会』内の不穏分子の監視と処分を実行していたのです。それと君が魂の救済と信じて行っているウェルスの浄化……それは……

さらに喋り続けようとする司教をジェシーが遮った。

「そこまでだ、スタイン。答えろ、なぜ"こんなまだるっこしいやり方"をする?」

「これは"生き甲斐"なのだ。今ここで貴様のハラワタを引きずり出したい衝動に駆られるが、暇がない」

そう言うと、司教はビリーたちに従者をけしかけて立ち去った。

ビリーたちは従者を倒して司教を追ったが、司教は巨大な機動ギア、アルカンシェルで逃げ出してしまった。


アルカンシェルが向かった先にタムズがあると知ったバルトたちは、いち早くユグドラシルに戻り、追撃した。

その頃タムズは他の船と隊列を組み、発掘現場へと向かっていた。そのタムズの上空に、突然キスレブに現れたツボのような形の戦艦が出現しビーム砲を斉射した。それによってタムズ艦隊はほぼ壊滅した。

戦艦の指揮官はカレルレンと言う男だった。彼は部下にウェルスの射出を下命した。ウェルスに襲われ防戦に追われるタムズを尻目に、カレルレン艦は発掘現場へと向かっていった。

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ep31 波よ聞け、死霊のわらう船

翌朝。ユグドラシルに乗艦したビリーはエリィにエトーンとなった理由を聞かれ、自分の身の上を語り始めた。

ビリーがまだ小さかった頃、ジェシーが突然蒸発。母ラケルプリメーラ、ビリーの三人で暮らす事になった。

彼が12歳の時、家が死霊の群れに襲われた。死霊はラケルジェシーの居場所を聞いたが、ラケルは口を割らず殺された。ビリーたちは間一髪の所でストーン司教に助けられたが、プリメーラはその時から喋らなくなったのだという。

その後ビリーはストーン司教に憧れ『教会』に入ってエトーンの修行を積んだ。

何年かして家に戻ったビリーとプリメーラの元に、ジェシーが現れた。しかし人相が変わっており、今でも本当の父親か信じられないという。だがプリメーラは懐いていて父親が必要だし、ビリーも心の底では父親であって欲しいと思っているのだ。


ビリーの話が終わった頃、ユグドラシルは輸送船を発見、接近した。

輸送船は予想通り死霊に占領されていた。襲い掛かる死霊を掃討しつつ船内を進んだビリーたちは、艦橋で最後の死霊を倒した。その死霊が巨大ウェルスを呼んだ事を知ったビリーは、艦橋の通信設備で孤児院に連絡。

孤児院では子供達が協力してビリーのギア、レンマーツォをオートパイロットに設定、発進させた。

間一髪、巨大ウェルスの襲撃に間に合ったレンマーツォに乗り込み、ビリーはこれを撃破した。

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