ep32 信仰 炎の海で焼かれよ、我が魂

輸送船を後にした一行は、報告の為『教会』本部へと戻った。

一歩建物に入った途端、彼らは異変に気づいた。何者かが『教会』関係者を虐殺していたのだ。

粛清!と叫びながら襲い掛かる侵入者を排除しながら施設を回ると、教皇すらも殺されていた。

「神の裁きが下される」と言う教皇の最後の言葉に困惑しながらも、ビリーたちは奥へ向かった。

途中で監禁され衰弱していたシェバトの工作員を助けつつ地下に進んだ彼らは、大聖堂の真下に位置する施設を発見した。そこはソラリス製の最新設備が整っており、データベースからは以下の情報が得られた。

教皇であるシャーカーンから定期的に連絡が入っている事、教会が資源をソラリスに送っていた事。

さらに暗号化されたデータから衝撃的な事実が判明する。

500年前に起こったソラリスと地上との戦争後、地上人が再び造反する事を恐れたソラリスは『ゲート』と呼ばれる障壁を開発。その障壁に囲まれた地域に地上人を種族別に住まわせ、それを管理する組織として『教会』を設立。『教会』はその後、資源や人材などをソラリスへ送る窓口にもなった。

また近年『教会』が独自に進める計画があった事もわかった。『第44次サルベージ計画』。タムズの艦長が言っていた「大仕事」だった。アクヴィの地下にあるゼボイムの遺跡の発掘。そこからは生物兵器や反応兵器などが見つかっている。シタンはこれらの情報から、『教会』がソラリスから独立し、世界支配を画策していたのではないかと推測した。


自分の信じる『教会』がソラリスの下部組織であり、救済を求めてきた人々がソラリスに送り込まれている事を知って愕然としながら部屋を出たビリーを親友のベルレーヌとその従者が待ち構えていた。

ビリーに銃口を向けるベルレーヌ。そこへジェシーが現れ、ベルレーヌがソラリス工作員で、ストーン司教配下の暗殺部隊だと暴いた。

ベルレーヌは不気味に笑いながらビリーに言った。

「穢れた者を浄化したのさ、司教の指示でね」

「僕たちには勝手に人を裁く権利はない! 審判は神が下されるものだ!」

すかさず返すビリー。

「神だって?そんなものどこにいるんだい? 君の信じた『教会』は、ソラリスが地上の情勢を操作するために作られた組織だ。操作された衆愚は戦争を繰り返した。そうした戦争の心理的軋轢を解消するための信仰と救済。そういう『システム』だったんだ。神なんて"最初からいなかった"のさ。それに君だって断罪を下していたんだよ。君が日ごろその手にかけていた……グハッ!」

銃声がして、ベルレーヌが倒れた。ビリーが後ろを振り返ると、そこにストーン司教がいた。

「私はソラリスの粛清官。私の創った組織エトーンは、表向きはウェルスの浄化、しかし実際は有能な人材を選別し、『教会』内の不穏分子の監視と処分を実行していたのです。それと君が魂の救済と信じて行っているウェルスの浄化……それは……

さらに喋り続けようとする司教をジェシーが遮った。

「そこまでだ、スタイン。答えろ、なぜ"こんなまだるっこしいやり方"をする?」

「これは"生き甲斐"なのだ。今ここで貴様のハラワタを引きずり出したい衝動に駆られるが、暇がない」

そう言うと、司教はビリーたちに従者をけしかけて立ち去った。

ビリーたちは従者を倒して司教を追ったが、司教は巨大な機動ギア、アルカンシェルで逃げ出してしまった。


アルカンシェルが向かった先にタムズがあると知ったバルトたちは、いち早くユグドラシルに戻り、追撃した。

その頃タムズは他の船と隊列を組み、発掘現場へと向かっていた。そのタムズの上空に、突然キスレブに現れたツボのような形の戦艦が出現しビーム砲を斉射した。それによってタムズ艦隊はほぼ壊滅した。

戦艦の指揮官はカレルレンと言う男だった。彼は部下にウェルスの射出を下命した。ウェルスに襲われ防戦に追われるタムズを尻目に、カレルレン艦は発掘現場へと向かっていった。

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