ep43 天上の楽園 ソラリス潜入!
ソラリスのゲートは本土にある発生機によって完全には消えていなかった。しかしながらその効力はかなり弱まっており、ゼプツェンのグラビトン砲でわずかにこじ開ける事ができるとの事だった。
その一瞬にフェイ、シタン、エリィの先発隊が侵入。他のメンバーは別ルートから侵入する事になった。
一度解散し皆が準備を整える中、シタンは妻ユイに会っていた。
「行くのですね…。ソラリスへ…」
先に口を開いたのはユイだった。
「ええ…。自分で決めた道です。もう、後戻りはできません…」
「傷付くわ…。彼らも、あなたも…」
「そうですね…。しかし、私には他に取るべき道を見つけられなかった…。
もしも私が、闇の想念に取り込まれてしまうようなことにでもなったら、その時には私はもう…」
「それ以上何も言わないで。承知しています…。」
そう言うと、ユイは一本の刀を取り出した。
「さあ、これを。あなたの剣です…。どうぞ、ご無事で!」
「あなたも…。ミドリを頼みます。」
シタンは自ら封印した剣を、受け取った。
これからの戦いは負ける事が許されない戦いなのだ。そう自分に律し、シタンは妻と別れた。
その後、フェイたちはゼプツェンに乗ってソラリスに向かった。なぜかハマーも一緒に。
フェイたち三人が最初に降り立ったのは地上から上がってきた物資を集配する所のようだった。
とりあえず情報収集をする事になり輸送用のコンテナを調べていたフェイだったが、突然そのコンテナが動き出しどこかへ運ばれてしまった。
着いた先は居住区のような所だった。第3級市民層。通称働き蜂と呼ばれる地上人たちが住んでいる区域だ。
ここに住んでいるものはアレンジと呼ばれる洗脳を受け、昔の記憶もなくして奴隷のように働いていた。
後を追ってきたエリィと合流したフェイはとりあえずこの区画を出る事にした。シタンとはまだはぐれたままだったが、彼はこの街に詳しいためいずれ合流できるだろうとの事だった。
第3級市民層と第2級市民層を繋ぐ唯一の通路、監視塔。二人はそのセキュリティをエリィのIDを使って抜けた。
そこでフェイはソラリス市民の生活を見ることになる。隅々まで清掃の行き届いた道。その道をホバーカーが走っている。市民は高度に発達した科学技術により病に悩まされる事もなく、何不自由なく暮らしていた。
戦に乱れる地上と比べると、まさしく天上の楽園といった趣である。
ホログラフで彩られた煌びやかな街を歩いていた二人は、アラボト広場で軍の観艦式が行われると知った。
ゲートの消失による動揺を抑えるために何らかの情報が提示される。そう考えた二人は広場に向かった。
空中戦艦が艦隊飛行を披露するなか、天帝が壇上に現れ市民に語りかけた。
「地上ゲートの消失は、前もって計画されていた事である。"福音の劫"に向け、我々は神の眠る地、"マハノン"への扉を開いたのだ。愚かなる獣ラムズに我らの力を知らしめようぞ」
天帝の演説を魅入られたように聞いていたエリィは、フェイに呼ばれて我に返った。
壇上では天帝の次にカレルレンが演説を始めた。
カレルレンを見て、フェイはデジャヴを覚えた。そして、彼の古い記憶が揺り起こされる。
500年前のニサンの大聖堂。そこでフェイ、いやラカンはカレルレンに会っていた。
絵の具を取りに帰るというラカンに、カレルレンは護衛を買って出たのだ。当時既にソラリスとの戦争が始まっていた。道中ラカンはカレルレンの変貌を語っていた。冷酷非情な軍人であったカレルレンはソフィアと出会う事で学問に目覚め、人としての心を取り戻したのだった。彼はメルキオールと言う師の下について、分子工学を研究していた。ある日彼は研究が結実したとラカンに嬉しそうに語ったのだった。
この記憶は明確にフェイが思い起こしたものではない。カレルレンの姿を目にした事により無意識下で呼び起こされ、それがフェイにはデジャヴのように感じられたのだった。
そのカレルレンの演説は続いていた。彼はエテメンアンキに侵入した地上人を捕らえたと言った。彼の傍に、別ルートで潜入していたバルトたちがホログラフで表示された。
「古のガゼルを蘇らせる為に、この者たちを明後日、ソイレントシステムにて処分する」