ep44 逃避行 なつかしの我が家
カレルレンの言葉を聴きすぐにも助けに行こうとするフェイと、それを抑えようとするエリィはやがて口論になり、警備兵に見咎められてしまう。即座に逃げ出した二人はセキュリティに追われ、下水道に逃げ込んだ。下水道を抜けた先は第1級市民層だった。出口から歩くと程なくしてエリィの家に辿り着いた。
家に入ると母のメディーナが驚いた顔で出迎えた。エリィは行方不明と知らされていたのだ。
一通り言葉を交わした後、エリィたちは彼女の自室へ移動し一息ついた。シャワーを浴び落ち着いた所でフェイが彼女の母親の話題を振ると、エリィの顔が曇った。彼女には地上人の乳母がいた。自分の髪の色と外見がソラリス人のそれと違う事から、エリィは地上人の乳母が実の母親ではないかと思っていたのだ。
重くなった空気を振り払うように、彼女はバルトたちを救い出す手立てを考えようと提案した。
彼女は父の自室にある端末からソイレントシステムの情報が得られるかも知れないと考えた。
父親エーリッヒの部屋に移動した二人は、ネットワーク端末にエリィの名前を逆から入力したパスワード「MYYAHELE」でログイン。検索の結果第3級市民層のダストシュートからソイレントに入れる事を突き止めた。
その時エーリッヒとメディーナが部屋に入ってきた。自室にいるフェイを見たエーリッヒは部屋の電話で軍警に出動を要請し、フェイに銃を向けた。
「やめて! フェイは捕らえられた仲間を助けたいだけなの!」
「エリィ、反逆者がどうなるか知っているだろう?私はお前の身を案じて……」
「嘘!お父様は自分の立場が危うくなるのが嫌なだけでしょう!?私のユーゲント入りを反対したのだって、地上人との間に生まれた私を皆に見せたくなかっただけじゃない!」
「お前はまだそんな事を……よく母さんの前でそんな……!」
言い合いを続ける2人をフェイが遮った。
「やめてくれ! 俺のせいで親子喧嘩なんて…。俺がここから去ればいいだけだ。エリィ、お母さんの前であんな事言うもんじゃないよ。あの表情は決して他人の物なんかじゃない、そうだろ?」
そう言うとフェイは部屋から出ようとした。すると、突然エーリッヒが窓ガラスを銃で割った。
「たとえ侵入者であっても、娘を守ってくれた事は確かだ。侵入者は逃げた。それで良いだろう」
その場を去ろうとするフェイにエリィは同行しようとしたが、エーリッヒに止められた。
フェイも彼女を抑え、「今度こそ軍を抜けろよ」そう言って立ち去った。