ep38 シェバト襲撃! 父の遺産
ソラリスの軍勢はシェバトのゲートの出力が落ちた隙を付き、ジェネレーターの四つの親機を狙っている。
女王の間に集まったフェイたちは戦闘経験のないシェバトの兵に代わって迎撃に向かうことになった。
ソラリス軍の情報を整理していたシタンは、正体不明の大型ギアの存在に気が付いた。そのギアがスクリーンに映し出されると、マリアが声を上げた。ゼプツェンの二号機にあたるアハツェンだった。設計図は父が燃やしたはずと困惑する彼女は、そのアハツェンから父ニコラの声が流れた事でさらに動揺した。
「ネズミどもが逃げ込んだらしいな。ちょうど良い。シェバトごと叩き潰してくれる!」
動揺するマリアを女王が一喝し、シタンは作戦を全員に伝えた。四つのジェネレーターを各個に防衛するのだ。
即座に迎撃に出たフェイたちは、獅子奮迅の活躍で侵攻部隊を退けた。
しかし、アハツェンから放たれた対ギア用サイコ・ジャマーを受け、フェイたちのギアは沈黙してしまう。
この事態に際し女王の間に残っていたシタンはマリアにゼプツェンで出撃するよう頼んだ。アハツェンの兄弟機であるゼプツェンならジャマーに対するシールが搭載されているはずだ、と考えたのだ。
しかし、父と戦う事はできないと彼女はそれを拒んだ。
すると、なぜか付いてきていたチュチュが迎撃に出ると言う。制止も聞かず出て行くチュチュ。
後を追ってバルコニーに出たマリアはチュチュが巨大化する現場を目撃してしまう。
巨大化したチュチュはアハツェン相手に善戦。しかしアハツェンの主砲に打ちのめされてしまう。
それを呆然と見ているマリアの所にミドリが現れた。
「ミドリちゃん!ダメよ、こんな所にいちゃ!!危ないから中に…」
「呼んでる……、お父さん……」
その言葉にアハツェンを見つめるマリア。
「ううん…。違う…。あそこにいる悪いヤツじゃ、ない…」
そう言うと、ミドリは格納庫の方を指した。
「……!ゼプツェン!!」
彼女は走り出した。格納庫へ駆け込んだマリアはゼプツェンを発進させた。
アハツェンと対峙するマリア。その彼女にニコラが語りかける。
「マリア、私と共に来い。愚かな者と滅びる事はない。これからはずっと一緒にいてあげるよ」
ニコラの呼びかけにひるむマリア。しかしゼプツェンがアハツェンを攻撃した。それを見たマリアは決断した。
「…アハツェン!あなたを倒します!!ゼプツェン、行きます!」
超重量級のバトルを繰り広げるゼプツェンとアハツェン。やがて再びニコラが語りかけた。
「マリア…聞こえるか?今から遠隔操作でゼプツェンのグラビトン砲の封印を外す!それで私を倒すんだ。」
「!!お父さん!正気に戻ったの!?だめ、できません!グラビトン砲は、その破壊力ゆえにお父さん自身が封印されたのではないのですか。そんなの使ったら、お父さんは…。」
突然正気を取り戻した父に驚くマリア。
「構わん!撃て!ニコラはもういない。ソラリスの洗脳を受ける前にアハツェンにはゼプツェンと共鳴して作動する良心回路を組み込んでおいた。このメッセージは、そこからのものだ。それに、戦闘中にそちらのゼプツェンに私のデータは全て転送した。体は失っても、心はゼプツェン、いやマリア、お前と共にある。これからもずっとな…。」
「…だめ、私には、できません!!」
マリアの意思とは逆に、ゼプツェンはグラビトン砲の発射準備を始めた。
「ゼプツェン!やめて…。制御できない!お父さんが動かしているの!?お願い、撃たせないで!!」
ゼプツェンのグラビトン砲が発動した。それを避けもせずに受け、アハツェンは消滅した。
「…お父さーーーん!!」
ソラリスの侵攻が落ち着いた頃、フェイたちは女王の間に集まっていた。
真の自由を得るためソラリスを倒すと心に決めた彼らに、女王はソラリスが三つのゲートによって隠されている事を教え、そのゲートを取り除かなければソラリスにはいけないと語った。
ゲートの一つは『教会』本部の地下、ギアでも潜れない深さにあり、他の二つは場所が分からないと言う。
さらに女王は、アヴェ軍がニサンに侵攻したという情報を伝えた。目的はニサンに眠るファティマの至宝、つまりバルトの先祖、ロニ・ファティマの残したギア・バーラー。
それを聞いてバルトは憤慨し、すぐにニサンへ向かおうと提案。フェイ達もそれに同意した。
意気込んでいるフェイ達に、マリアが声を掛けてきた。
「あのう…わたしもあなた方と一緒に連れて行ってもらえませんか?もう、じっと待っているのはイヤなんです。動きたいんです、私も…。ゼプツェンも…!」
女王もマリアに生きる理由を自分で勝ち取れ、と後押しした。フェイ達はこれを快く受け入れ、マリアは一行と行動を共にする事にした。
出発前、フェイ達はワイズマンの師であるガスパールに教えを受け、新たな力を身につけた。
ガスパールは女王に会うと、私はあの愚行を繰り返さぬように監視に来たのです、そう語った。
その頃、ドックで異変が起こっていた。地下にあるギア・バーラーがエリィと同調して起動したのだ。
それを聞いた女王とガスパールは、やはりと頷いた。それを受けて傍にいたワイズマンが言った。
「しかし、あの娘は乗ろうとはしない。無意識に気づいてるのです、わが身に内在する存在に」
「彼女も……ソフィアもそうだったのでしょうか……。……すみません」
「いえ、私は"彼"そのものではありませんから……」
こうしてフェイたちは、マリアを新たな戦力に加え、ニサンへ向かった。