ep39 砂漠の王 守れ、ニサンの微笑み
シェバトの技術によって飛行ユニットを取り付け飛行機能を得たユグドラシルは、ユグドラシル3世と名乗る事になった。
そのユグドラシルでニサンに向かったフェイたちは、法王府の街中に駐留していたシャーカーンの兵を一掃し街を開放した。だが街に住民の姿はなく、修道院にシスターが残っているのみだった。
そのシスターたちのまとめ役であるアグネスに、フェイたちはこれまでの事情を聞く事になった。
以前バルトたちが出発してから町の住民の大半が歴代のアヴェ国王と大教母が祭られている大霊廟に避難したのだが、シャーカーンはその大霊廟にあるファティマの至宝を狙っているとのことだった。
アグネスは彼が大霊廟の封印をマルーの母である前大教母の亡骸を使って解こうとしていると伝えた。
バルトの話によるとファティマの碧玉とはアヴェとニサンの王家の血筋の者の網膜の事であり、大霊廟の入り口は網膜パターンを照合する事で開くという。シャーカーンは遺体の網膜を使うつもりなのだ。
人質を取られてやむなく喋ってしまったと謝るアグネスをなだめ、バルトはすぐにも霊廟へ向かおうとした。
そこにシグルドが提案をした。ニサン侵攻で手薄になったブレイダブリクを別部隊が攻め、奪還する事でシャーカーンの逃げ場を奪うと言うのだ。それをバルトは了承。作戦は即座に開始された。
バルトたちは修道院の北にあると言う霊廟へマルーを伴って向かった。
入り口から長い階段をくだり大きな広間に出ると、そこには避難していた住民たちがいた。
バルトは彼らに街は開放され王都も間もなく奪還されると伝え、街へと帰した。
住民らが立ち去った後バルトたちは広間の壁際に祭られた墓を調べたが、荒らされた形跡は無かった。
シャーカーンの手が伸びる前にと、彼らは広間中央のエレベーターからさらに地下に降りた。
エレベーターで降りた先はまるで軍事要塞のように近代的だった。薄暗い廊下を進んでいくと、閉ざされた扉の前にコンソールがある部屋に行き当たった。そのコンソールが網膜パターンの読取装置だった。
片目が潰れているバルトに代わり、マルーが瞳を読み取らせた。開いた扉の先に進みエレベーターでさらに下層に下りた彼らは、また読取装置に行き当たった。
開錠された扉の先は広大な格納庫になっており、そこにギア・バーラー、E・アンドヴァリはあった。
ついに至宝を発見した彼らは次にアンドヴァリを地上に出す方法を探した。すると格納庫とは別の区画にブリッヂらしき所を発見。早速コンソールを操作してみると、建物は大地を割って空へと浮かび上がった。
この要塞の望遠カメラははるか遠くバベルタワーまでスクリーンに鮮明に映し出した。気を良くしたバルトはアンドヴァリを出すため天井を開けようとした。
「ん?あれ?」
不安な声を出し始めたバルト。不吉な予感がしたフェイがどうした、と声をかけるも
「え?あ、いや、なんか動いてるから。」
とさらに不安になる事しか言わない。あなたが動かしてるんでしょ?とエリィも問うも
「い、いや違うんだよ。そうじゃなくて。」
「なんか…押すとこ…間違えた。」
そう言い終えると同時に、突如ビーム砲が発射された!!
「よーし成功!!」
「「「どこがぁ〜!!」」」
「へ?何のこと!?」
うまいこと誤魔化そうとするバルトに、フェイはとぼけるな!一体何を動かしたんだ!?と問いかけるも
「…まぁ…確かに完璧な操作とは言えなかったかもしれないが…。ま、大丈夫だろ!」
と悪びれる様子のないバルト。
フェイたちの冷たい視線をかわすように碧玉要塞とこの要塞を名付け、バルトは改めて天井を開けようとした。
「さあ、さっさと至宝を持って帰るぞ!その為にはこの天葢のドアを開けないとな!こっちの操作パネルではないという事は…あっちだ!
うーん、同じようなスイッチがいくつか並んでるなぁ。ま、いいや。テキトーに押しちまえ!」
「おいおい!本当に大丈夫か!?」
さすがに心配するフェイ。しかし今度こそ、無事に天井は開いていった。
すると、それを待っていたかのように天井からシャーカーンが従者と共にギアで侵入してきた。
シャーカーンはバルトたちがこの要塞の封印を解くのを待っていたのだ。
バルトは歯噛みし、侵入してきた兵を蹴散らしながら格納庫に向かった。彼らは格納庫前の通路でシャーカーンと対峙したが、兵に囲まれ身動きが出来なくなってしまう。その中で兵の一瞬の隙を付いてマルーが包囲を脱出、格納庫へと向かった。
シャーカーンがマルーを追って行った時、シグルドとシタンが現れた。王都奪還を他の者に任せ加勢に来たのだ。
彼らの力を借りて兵を一蹴し格納庫へ向かったバルトたちだったが、扉がロックされてしまい片目のバルトでは扉を開ける事が出来ない。焦るバルトをいなし、シグルドが自分の片目を読み込ませロックを解除した。
その事に疑問を持つ間もなく格納庫に向かったバルトは、アンドヴァリに乗って応戦するマルーを見た。
銃弾が飛び交う中アンドヴァリに乗り込んだ彼は傷ついたマルーと操縦を交代、敵機を撃破した。
彼の戦いぶりに劣勢を感じたシャーカーンは、あっさりとその場を離脱した。
マルーの手当ての為にシャーカーン追撃を諦め、バルトは気を失った彼女をギアから下ろした。
彼女に応急処置を施しながら、シタンはこのギア・バーラーが搭乗者の精神波と同調して動くのではないかと推測した。マルーがこの機を動かせたのも、バルトの力になろうと言う彼女の必死な思いがあったこその事だったのだ。