ep23 粛清! 暗夜に舞う死の影は

闘技場。生身のリコに地竜が襲いかかろうとしていた。間一髪、飛来したヴェルトールに撃破される地竜。フェイはリコに語りかける。

「俺は帝都を脱出する。あんたはどうするんだ? やり残した事があるはずだろ」

「黙れ! 二度もこの俺の。行くならさっさと行け。俺はたとえここで死んだとしても帝都は離れん」

頑ななリコ。その時、帝都に空襲警報が鳴り響いた。ゲブラーの爆撃艦が上空に達したのだ。

艦の行方を見ていたシタンは、一艦が原子炉への直撃コースを取っているのに気づいた。それを聞いたフェイは、艦の針路を変えるために向かって行った。一方シタンはハマーを伴って市民を避難させ始める。

爆撃によって方々から火の手が上がる町を見ながら、リコはフェイの言葉を思い出し、1人毒づいた。

「俺の町……? クソッタレの町……。俺も……クソッタレだ……な」


艦隊護衛の特殊部隊のランクたちは飛来するヴェルトールに気づき、エリィの制止も聞かず迎撃に出た。

「スマンな隊長。だが、俺達は武人として、ヤツと決着をつけたいのだ」

一斉に掛かってくる彼らに苦戦するフェイに、突如飛来したシューティアが加勢した。

「気に食わねぇ奴らをぶっ飛ばすのに理由はいらねぇ。お前も含めてな」

……それも一つの理由だ」

素直ではないリコにフェイは答えた。

リコの助けを得てランクたちを撃破したフェイの前に、エリィが立ちはだかった。

その事に驚きながらも、フェイはリコを先行させ彼女と対峙した。

「軍を抜けろと言ったのに、どうして……

エリィに声を掛けるフェイ。しかしエリィは自棄的に答えた。

「できるならとっくにやってるわ!でも変えられないの。貴方のように自由に自分の道を選べない。これが私の居場所……お願い、解って」

「俺も居場所は無いよ。バルトたちは艦ごと行方不明になってしまった。俺に居場所はもう無いんだ」

「そんな……じゃあ、なんの為に戦ってるの……?」

「お前は戦うのがそんなに好きなのか?人が死ぬのを見るのがそんなに好きか!?

「バカな事言わないで!好きなわけないじゃない」

「だったら来い!」

ギアからエリィを降ろし、高台に連れて行くフェイ。町は今にも火の海に飲み込まれんとしている。

「見ろ!この街を!その目でこの光景を見てみろ!これがお前達のやっている事なんだぞ?任務なんていうたった2文字だけで全て片付けられるってのか?これが!?」

目の前の惨状を見せ、フェイは声を荒げた。

「私にはそれしかないものっ!」

「お前、まだそんなことを!

似合わない事するなよ。無理して居場所作らなくてもいいじゃないか。俺が何のために戦っているのか、自分でもよく分からない。けど、戦う事が自分や、自分を必要としてくれる人に少しでもプラスになるなら、なにもしないでいるより遥かにいい。それだけさ。俺は、行くよ。」

去ろうとするフェイをエリィが止める。

「だめっ!行ってはだめ!彼女は、ドミニアは今までの兵士とは違うの!私たちゲブラーの中でもエリート中のエリート。エレメンツと呼ばれる、ラムサスの近衛部隊の1人なのよ!?かないっこない!」

しかしフェイは止まらず

「それでも俺は、あれを止めなくちゃならない。キスレブとはなんの関係もない先生も、そしてハマーも、必死で住民を避難させてる。リコはこの町を憎んでいるはずなのに協力してくれている。だから、俺は行くよ……

そう言って、フェイはリコの後を追った。残されたエリィは、燃え盛る町を見つめ続けた


艦隊のコントロール艦ヘヒト。そのコントロールユニットを操るドミニアに挑みかかっていたリコは、追いついたフェイと共にドミニアのエアッドに手を焼きながらもこれを撃破、艦首に回り込んだ。

艦の針路を変えようと最大出力で艦首を押す二人だったが、あまりの質量に思うように針路が変わらない。

そこへエリィのヴィエルジェが加勢。三機が力をあわせ、原子炉直撃コースからは外れた。さらに被害の少ない針路に変更しようとする三機だったが、シューティア、ヴェルトールが相次いでオーバーヒート。

フェイの止めるのも聞かず一人残ってギリギリまで艦首に取り付いていたエリィだったが、ヴィエルジェのエネルギーが尽き、退避することも出来ずに墜落してしまう。

ヘヒトの墜落と共に大質量爆弾が爆発した。その爆風にヴィエルジェが巻き込まれようとしたその時、彼方からグラーフのギアが凄まじい速さで飛来し、ヴィエルジェを庇った。爆風が収まりエリィの無事を確認すると、彼は何も言わずに飛び去った。エリィはグラーフに誰かの面影を見ていた。

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