ep22 侵入ギアドック 地に落ちた英雄
D区画。バトリングで優勝したフェイはキングの称号とランクSの特権を与えられ、首輪爆弾も取れた。
フェイは委員会に案内されキングに与えられる部屋に入ると、リコの消息を尋ねた。
リコはフェイとの試合の後に行われた団体戦で総統の観覧席に突入、行方不明との事だった。
委員会はジークムントがフェイに会いたがっている旨を伝え、去っていった。
リコの消息を心配しながらもとりあえず行動を起す事にしたフェイたちは、まずヴェルトールを回収するべくハマーに情報収集を頼み、その間にジークムントに会いに行ってみることにした。
キスレブ総統府。門番の兵士達に案内され、フェイとシタンは総統府の中に入っていった。その門番がいなくなった一瞬の隙をついて、リコが総統府へ侵入した。
そうとは知らないフェイたちは兵士に案内され作戦司令室や艦橋など各所を見て回った後、総統室へ。
そこで総統とフェイが話を始めた直後、天井に忍んでいたリコが落ちてきた。リコは慌てて部屋を逃げ出し、今は住むものも無い遺伝子ロックで閉ざされたままの総統の妻の部屋に逃げ込んだ。
部屋に残された残り香がリコの記憶を呼び起こした。
普通の人間となんら代わりのない幼い頃のリコと母親。病弱な母親は幼いリコに離れて暮らす立派な父親の話をしていた。時が経ち、二人の生活は次第に変化していった。リコの爪と耳が長く伸び始め、リコと母親は周囲の人間から亜人の親子と非難され始めた。やがて母親は寝たきりになってしまい、リコは一人亜人として生きていかなくてはならなくなった。
本人ですら忘れていたその記憶。それを呼び起こしたこの部屋の匂いに困惑しながら、彼は鏡台に置かれていたペンダントを手に取った。
その時、フェイたちが扉を叩いた。彼らと共に部屋を出たリコは、そこに現れた総統の兵士によって捕らえられた。
どうする事も出来ずに総統府を後にしたフェイとシタンは、ハマーからの情報でヴェルトールがD区エリアの地下ドックに移送された事を知った。そこへの侵入ルートは闘技場内と輸送列車トンネルの二つ。闘技場内からの侵入は不可能と判断したフェイは、残る輸送列車の通過時間の調査をハマーに依頼し、D区に戻った。
キングの部屋に戻ると、リコ配下の者達が待っていた。彼らはリコを助けて欲しいと言う。
リコは今夜、総統ジークムント暗殺未遂の罪で闘技場で公開処刑に処されるというのだ。
事情はこうだ。そもそもバトリング管理委員会は『教会』の人間で構成され、以前は政府の一大勢力だった。
しかしジークムントによりそのほとんどが放逐され、バトリングすらも自らも管理しようとする総統が邪魔になった。そこで委員会は一計を案じた。ジークムントの推進した亜人排斥運動により虐げられたリコを利用し、総統を事故に見せかけて暗殺しようとした。しかしそれも失敗してしまった。
リコを真のキングと仰いでいた彼らは、委員会に操られたリコを何とか助けたいと語った。
フェイは戻ってきたハマーから今夜輸送列車が通ると聞き、ヴェルトール奪回の後そのまま闘技場へ侵入しリコを救出するという作戦を立てた。
時は移り夜。準備を終え仮眠を取ったフェイとシタンは、作戦決行のため輸送列車に忍び込んだ。列車がトンネルに入ったところで列車から通風孔へ飛び移り、迷路のような通風孔を通ってギアドックへ。無事ヴェルトールを回収し、闘技場に向かった。