ep30 安らぎ 海流のなかの孤児たちと
『教会』本部。荘厳な礼拝堂とは打って変わって、近代的な施設に医局はあった。
そこでフェイを診察した医師は、単に疲労がたまった為の昏睡であり時間が経てばめを覚ますだろうと診断した。
安心したエリィたちはフェイをユグドラシルに移し、ビリーに礼を言うため孤島の孤児院へ向かった。
孤児院。そこではビリーが身寄りのない子供達と共に暮らしていた。
そこでエリィたちがビリーに礼を言っていると、シグルドが追ってきて巨大な艦影を補足したと報せた。
ゲブラーか、とユグドラシルに彼らが戻ろうとした所にジェシーが現れ、シグルドを見止めるや声をかけた。
「おっ、そこの黒くて白いの。お前、シグルドか!?」
「黒いだの白いだの、いきなり無礼な!何者だ、お前は!」
緊迫した流れになりそうな所にシタンが説明に入る。
「あ…、パッと見ではピンと来ないでしょうが、先輩ですよ、シグルド」
「せ、先輩!?ジェシー先輩!?」
驚きを隠せないシグルド。ビリーも
「シグルド兄ちゃん!?」
と驚いている。
「シグルド兄ちゃんだぁ!?」
あ、バルトも。
シグルドはユーゲント時代ジェシーの家に下宿しており、ビリーとも旧知の間柄であったのだ。
「コハク色の肌に銀髪なんて、男にゃ滅多に居ないからな。なんなんだ、お前ら。今頃ガン首揃えてゾロゾロと。」
心なしか嬉しそうなジェシー。
「まぁ、成り行きと言いますか…」
「色々ありまして…」
妙な縁だな、と思う後輩2人。
「まぁ、詳しい話は飲みながらジックリと聞かせてもらおうか。…それにしても、今頃になってなんでこう集まるかねぇ。」
久々の再会を喜ぶジェシーはシタンとシグルドを半ば強引に連れ、ユグドラシルのバーに飲みに行ってしまった。
あっけに取られていたエリィたちが我に帰りユグドラシルに戻ろうと孤児院を出ると、そこにビリーの上司であるストーン司教が現れた。
司教によると以前から行方がわからなくなっていた教会の輸送船が発見されたのだが、通信で呼びかけても応答が無く、ウェルスに襲われ占領されている恐れがあると言う。その調査をビリーに頼みに来たのだ。
フェイの事もあってエリィたちはその仕事の手伝いを申し出、早速出発するためにユグドラシルに戻った。
ユグドラシルのバーでジェシー、シタン、シグルドが話をしている。
「なるほど、な。これがお前が帰る帰るって言ってた場所か。お前が出て行った後、ビリーの奴泣いてなぁ。」
バーを見回しながらジェシーはシグルドに言った。シグルドはただ、謝るしかできなかった。
「ソラリスを去った時もそうでしたよ。あの時はカールが荒れて荒れて。」
ラムサスの話をするシタン。
「別にあいつを裏切ったつもりはなかったんだが…」
「あれでかなり人間不信にみがきがかかったそうですよ。」
昔話に花を咲かせる3人。シタンはジェシーがなんの理由もなくこの地をうろついているわけじゃない事を問おうとした所で、エリィ達がバーに入ってきた。
その時、急にシグルドが倒れてしまった。
「キャアア!シグルドさんが!」
「またか!?シグルドはめっぽうお酒に弱いんです!
…だめです。出発は明日ですね…」
シグルドは動けそうもなく、結局出発は明日になった。
その夜。孤児院に戻ったジェシーはビリーと口論になった。『教会』を否定し、仕事を辞めろと言うジェシーにビリーは
「僕の生き方に口をはさまないでくれ。僕はまだ貴方を父親だと信じているわけじゃない」
と言い、話を切り上げたのだった。