ep13 王都アヴェ 嵐を呼ぶ大武会
翌日、作戦決行の時。フェイは会場に向かい、偽名を使って大会に参加した。
参加者控え室で、フェイはラハンのダンと再会する。
「…おまえのせいで…姉ちゃんは…。おまえを許さねえ。ぶっ殺してやる!
ラハン村のみんなの仇だっ!観客の前でメッタメタのギッタギタにしてやるからな!逃げんじゃねぇぞっ!!」
ダンは一方的に喚き散らすと、控え室を出ていった。困惑するフェイに、仮面の男ワイズマンが話しかけた。
「お主とあの少年。何やら訳ありのようだが…。」
「なんだよ、あんたは!?そんなこと、あんたには関係ないだろう!?」
「いや、なに……。お主があの少年に対してどのように戦うのか非常に興味があるのでな…。
まぁ、楽しみにしているぞ、"フェイ"」
「(なぜ俺の名前を……? 偽名で参加しているのに)」
開会の演説を終えたシャーカーンの下に、ラムラスとミァンが訪れた。ここに来たのは立ち寄っただけで大武会には興味が無いと立ち去るラムサス。だがミァンは一回戦の舞台に上ったフェイを見て「まぁ、素敵な子……」と興味のあるそぶりを見せた。
一回戦、二回戦、三回戦と精一杯会場を沸かせて勝ち上がったフェイは、準決勝でダンと戦う事に。
アルルの、ティモシーの、村人の恨みだと叫びながら戦うダン。フェイは反撃できるはずもなく、ただずっと耐えているばかりだった。
「…くそッ!こんなんでおまえを倒しても、ねえちゃんもティモシーもうかばれねえや!
えーい、ちきしょう!この勝負は、おあずけだ。今度会った時が、おまえの命日だからな!その時まで、こいつをおまえにあずける!毎日それを見て罪の重さに苦しむがいい!」
ダンはそう言うと、フェイにアルルの花嫁衣装を叩きつけて走り去った。フェイの不戦勝であった。
複雑な心境で決勝に望んだフェイ。決勝の相手は、あのワイズマンだった。飄々と攻撃をかわすばかりで手を出してこないワイズマン。会場の雰囲気が悪くなりつつある中、彼が語りかけてきた。
「お主、その技、どこで覚えた?」
「どこだっていいじゃないか。さぁ、ちゃんと戦ってくれ!」
「ふむ。ならば何故お主は戦う?自らの為か?他人の為か?」
「何故、そんな事を聞く?」
「人が戦うのにはそれなりの理由と目的があろう?」
「俺の戦う理由なんて、あんたには関係ないことだろ!」
「お主、理由も目的もなく戦っているのか?」
「うるさいっ!それを探している最中だ!」
「……やめておけ、お主に見つけられるハズがない。お主は前を向いているようでいて実は足下のみ、己の事しか見ておらん。それでは何も見つけられんよ。」
「そんな事、あんたに解る訳が…」
「解るさ、こうして拳を交えれば大抵の事はな。」
「くっ!黙れっ!!」
フェイは焦り、必殺の武技雷迅を仕掛けるが、それすらかわされてしまう。
「ぬるい、ぬるい。そんな撃ち方ではかすりもせん。まぁそれでも見かけだけは大分たくましくなったようだな。よくあの怪我から回復したものだ。フェイよ…」
「!!なぜ、俺の名前を知っている!?さっきだってそうだ。俺は本名でエントリーした憶えはないぞ。それに怪我から回復って……
…………!?
あんた、まさか!?」
「時間がない。さらばだ。」
謎の言葉を残し、彼は姿を消した。結局、うやむやのままフェイは大武会の優勝者となった。